麻酔銃と CQC の弱体化
これまでの MGS では、敵兵に囲まれた場合、彼らを殺害するのは悪手だった。死亡した敵の体は消滅してしまう。増援が表示限界にとらわれず次々と現れるのだ。
そこへ CQC が追加された。エイミング不要でアイテムの消費も騒音の発生もない。容易に敵を気絶させることができる。殺傷能力のある武器の存在意義が失われていった。相対的な弱体化ということなのか、シリーズが進み CQC にカウンター攻撃を繰りだす敵も追加されたが、プレイヤーに制限を課すばかりであまり面白いものでもない。「(鍵を探させるなんて)アホかと」と言いきる監督にとってはなおさらだろう。
CQC カウンターは GZ には存在しない。代わりとして、気絶や睡眠状態にある敵が消えるようになった。これによって、戦闘中に CQC や麻酔銃のような射程距離の短い攻撃で敵を排除しても、増援をさばききれないようになった。
これがおそらく、今までのシリーズの調子でアラート・モードを解除しようとしたプレイヤーに、グラウンド・ゼロズは難しいと感じさせる原因。これまでは一定数の敵を CQC で倒してしまえば終わっていた戦闘が、今作では後から後から増援があらわれ、終わらないのだ。もしアラート状態を戦闘で解除させる場合は、実弾でおこなえばずっと楽になる。こちらに駆けつけてくる増援を遠くから排除してしまえば、敵との交戦状態を継続させずに済むからだ。
これまでの MGS に見られた睡眠攻撃>気絶攻撃>>>>>>殺傷攻撃という使用頻度の格差を修正しようという試みが GZ のあちこちにみられる。アサルトライフルにもサブマシンガンにも最初からサプレッサーがついている。頭部以外の箇所に弾丸を当てて敵の瀕死を誘えば殺傷数にカウントされない。麻酔弾はすぐに落下するので射程距離が極めて短い(とはいえ、軌道を読んで命中させる面白さもある)。
MGSV はシリーズではじめて、登場する全ての兵器を架空のものに置き換えて改造の幅を広げるとのことで、 今まで陰の薄かった実弾兵器にも、さまざまな効果を付加できるようになるのかもしれない。 PW ではあまり気の乗らなかったマシンガンの開発にも期待できる。一貫して反戦をうったえ、さまざまなアイデアの非殺傷兵器が登場した MGS であるが、今になって殺傷兵器の地位が向上したことと、 MGSV のテーマが復讐であることは、おそらく無関係ではないのだろう。